「ブロー」で「アップ」させ、「ヘアセット」で固める。3つの言葉の違いと、完璧な連携
「ブロー」と「ヘアセット」、そして「アップ」。
メンズのヘアスタイリングについて調べ始めると、必ず出会うこの三つの言葉。似ているようで、それぞれが何を指しているのか、その違いや関係性が、少し曖昧に感じられることはありませんか。
「ブローでアップさせるって、どういうこと?」
「ヘアセットと、何が違うの?」
その小さな疑問こそが、あなたのヘアスタイルを、次のレベルへと引き上げるための、大切な入り口です。
この記事では、この三つの言葉の決定的な違いと、それらが完璧に連携した時に生まれる、最高のヘアスタイルについて、プロの視点から解説します。
役割が全く違う、3つのキーワード
この三つの言葉の関係を、ロケットの打ち上げに例えると、非常に分かりやすくなります。
「ブロー」は、ロケットを地上から空へと打ち上げるための、発射台であり、力強い主エンジンです。
「アップ」は、前髪を上げる、というロケットが目指す軌道、つまり目的そのものです。
そして、「ヘアセット」は、目的の軌道に乗ったロケットを、そこで安定させるための最終ブースターであり、軌道を固定するための工程です。
主エンジン(ブロー)の力がなければ、ロケットは軌道(アップ)に乗ることすらできず、最終ブースター(ヘアセット)も、何の意味も成しません。
それぞれの役割を、詳しく見てみよう
では、ヘアスタイリングにおける、それぞれの具体的な役割を見ていきましょう。
・「ブロー」の役割:髪の骨格と、基本的な「方向性」を創る
ドライヤーの熱と風を使い、髪の根元から、その日のスタイルの土台を創り上げる工程です。髪の生え癖をリセットし、全体のシルエットを決め、そして、髪が向かうべき基本的な「方向性」(例えば、前髪を上げる、サイドを抑える、など)を、髪自身に記憶させます。
・「アップ」の役割:ヘアスタイルの「目的」そのもの
「アップ」とは、ブローやヘアセットといった「手段」を用いて達成したい、「目的」のことです。具体的には、「前髪を上げる(アップバング)」という、ヘアデザインの名称や、その状態を指します。
・「ヘアセット」の役割:ブローで作った形に、「質感」を与え、「固定」する
ブローによって、すでに基本的な形と方向性が決まった髪に対して、ワックスなどのスタイリング剤を使い、より細かいディテールを加えていく、仕上げの工程です。毛束感やツヤといった質感を加え、創り上げた形が一日中崩れないように、完璧に固定(セット)します。
なぜ「ブロー」で「アップ」させることが、これほど重要なのか
多くの人が犯しがちな失敗。それは、ブローを疎かにしたまま、ワックスの粘着力だけで、無理やり前髪を「アップ」させようとすることです。
しかし、重力に逆らって髪の根元を立ち上げるほどの力は、ワックスにはありません。その結果、つけてしばらくは良くても、時間が経つと、髪とワックスの重みで、前髪は力なく落ちてきてしまうのです。
前髪を「アップ」させるという目的を達成するための、最も重要な工程は、主エンジンである「ブロー」なのです。
「ブロー」で完璧に「アップ」させるための、実践テクニック
前髪を上げるための、基本的なブローのテクニックは、前回の記事でもご紹介しましたが、ここでもう一度、重要なポイントだけをおさらいしましょう。
- まず、前髪の根元をしっかりと濡らし、リセットします。
- 次に、上げたい方向とは逆の方向から、温風を当てて根元を立ち上げます。
- そして、指で前髪をぐっと持ち上げ、その根元に温風を当て、その直後に冷風を当てて、形を記憶させます。
この「温めて、動かし、冷やして、固める」というブローの原理が、「アップ」という目的を達成するための、唯一にして最強の方法です。
そもそもの話、あなたの髪型は「アップ」するように創られていますか?
しかし、どんなにブローの技術をマスターしても、根本的に解決できない問題があります。
それは、あなたの現在の「ヘアカット」そのものが、そもそも前髪を「アップ」させるのに適したデザインになっていない、という可能性です。
前髪やトップの髪が、重すぎる、あるいは、梳かれすぎていてコシがない。そんな状態では、どんなに優れたブロー技術も、その効果を十分に発揮することはできません。
私たちプロの理容師は、「お客様が、ご自宅で前髪を上げやすいように」というゴールから逆算し、最適な長さ、最適な毛量を、ミリ単位で調整しながら、カットをデザインしていきます。最高の打ち上げのためには、まず、最高の「発射台」が必要なのです。
違いを理解したプロに、全てを任せるという選択
「ブロー」と「ヘアセット」、そして「アップ」。
これらの言葉の違いと、その完璧な連携を、誰よりも深く理解しているのが、私たちプロの理容師です。
もう、毎朝、力なく落ちてくる前髪に、ため息をつく必要はありません。
ぜひ一度、プロが設計する、完璧な「発射台」と、その「打ち上げ」の技術を、ご体験ください。
あなたのヘアスタイルは、驚くほど高く、そして一日中、その軌道を保ち続けることでしょう。