バリカンのみでスポーツ刈りは可能?セルフカットの限界とプロの技
「ハサミを使わず、バリカンだけでスポーツ刈りは作れますか?」
「セルフカットをしたいけど、持っているのはバリカンだけ…」
スポーツ刈りを作る上で欠かせない道具であるバリカンですが、それ「のみ」で理想のスタイルを完成させることができるのか、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
今回は、その疑問にプロの視点からお答えするとともに、「バリカンのみ」でカットする場合の手順や限界、そしてプロがなぜハサミを併用するのか、その理由について詳しく解説します。
結論:「バリカンのみ」で作れるのは「坊主」に近いスタイル
まず、結論から申し上げますと、私たちがイメージするような「トップに長さがあり、サイドが短い、デザインされたスポーツ刈り」を、バリカンのみで美しく作ることは非常に困難です。
バリカンは、髪を一定の長さに刈り揃えることは得意ですが、髪の質感を作ったり、頭の形に合わせて細かな調整をしたりするのは苦手です。
そのため、「バリカンのみ」で仕上げたスタイルは、トップもサイドも短い、いわゆる「坊主」や、それに近い「クルーカット」のような、ごく短い髪型になります。
「バリカンのみ」でセルフカットを行う場合の手順とコツ
もしご自宅で、バリカンのみを使ってセルフカットに挑戦する場合、以下の手順が基本となります。
- STEP 1: まずは一番長いアタッチメントで全体を刈る
失敗を避けるため、まずは9mmや12mmといった、最も長いアタッチメントをバリカンに装着し、頭全体の髪を均一の長さに刈り込みます。
- STEP 2: サイドと襟足を、より短いアタッチメントで刈る
次に、サイドや襟足の部分を、6mmや3mmといった、より短いアタッチメントに付け替えて刈り上げ、長短の差を作ります。
- STEP 3: 境目をぼかす
最後に、長い部分と短い部分の境目を、中間の長さのアタッチメントや、バリカンのアタッチメントを外した状態で、少しずつ繋げていきます。ここが最も難しく、段差ができやすいポイントです。
なぜプロはハサミを使うのか?仕上がりの決定的な違い
では、なぜプロの理容師は、バリカンだけでなくハサミを必ず併用するのでしょうか。それは、仕上がりの「質」が全く異なるからです。
- トップの自然な質感と束感
ハサミを使うことで、髪の毛一本一本の長さを微調整し、毛量を減らして「軽さ」や「束感」を生み出すことができます。バリカンでは、この自然な質感を作ることはできません。
- 頭の形に合わせた微調整
お客様一人ひとりの頭の形や骨格の凹凸に合わせて、ハサミで細かく形を補正していきます。これにより、絶壁などをカバーし、360度どこから見ても美しいシルエットが完成します。
- 滑らかで自然な繋がり
バリカンで刈り上げた部分と、トップの長い髪の境目を、ハサミを使って丁寧にぼかすことで、段差のない、プロならではの滑らかで自然なグラデーションが生まれます。
サロンでのオーダー方法
サロンでオーダーする際は、ご自身の希望を明確に伝えることが大切です。
- 「バリカンだけで、できるだけ安く、短くしてください」
もし、仕上がりの質よりも、価格や時間を優先したい場合は、その旨を正直にお伝えください。坊主ベースのシンプルなスタイルをご提案します。
- 「ハサミも使って、綺麗なスポーツ刈りにしてください」
デザイン性や、美しいシルエットを求める場合は、通常通りのオーダーをおすすめします。プロの技術で、最高の仕上がりをお約束します。
- 「セルフカットでバリカンだけ使ったら失敗したので、直してください」
ご自身で挑戦されて、うまくいかなかった場合もご安心ください。プロが責任を持って、バランスの良いスタイルに修正いたします。
道具の限界を、技術が超える。
バリカンは非常に優れた道具ですが、それ一つで全てのスタイルが作れるわけではありません。道具には、それぞれ得意なことと、不得意なことがあります。
バリカン、ハサミ、そしてカミソリ。それぞれの道具の特性を完璧に理解し、適材適所で使い分けることで、初めてお客様に満足していただけるヘアスタイルが完成します。
道具の限界を、人の技術が超える。それこそが、プロの仕事です。ぜひ一度、本物の技術をご体験ください。