ヘアセットの基本、「ブロー」とは?明日からの髪型が劇的に変わる、プロの乾かし方
理容室でカットを終え、鏡の前に座る、最後の仕上げの時間。
理容師が、ドライヤーとブラシを巧みに操り始めると、それまでバラバラだった髪が、みるみるうちに一つの美しいヘアスタイルへとまとまっていく。
「やっぱりプロは違うな…」と感心しつつも、翌朝、自分で再現しようとして、うまくいかなかった経験はありませんか。
その、プロとあなたの仕上がりを分ける、最も大きな秘密。
実は、ワックスなどのスタイリング剤の前段階、ドライヤーで髪を乾かす「ブロー」という工程に隠されているのです。この記事では、ヘアセットの全ての土台となる、「ブロー」の本当の意味と、その基本的な方法について解説します。
そもそも「ブロー」とは、ただ髪を乾かすことではない
多くの方が、「ブロー」を単に「ドライヤーで髪を濡れた状態から乾いた状態にすること」だと考えているかもしれません。しかし、それはブローの役割の、ほんの一部に過ぎません。
ヘアセットにおける「ブロー」の本当の意味。それは、スタイリング剤をつける前の、「髪型の土台」を創り上げる、最も重要な設計工程です。
髪の毛は、濡れている時は自由に形を変えやすく、乾いていく過程で、その形が固定されるという性質を持っています。つまり、この「乾かし方」を制する者こそが、ヘアセットを制するのです。
なぜ、ヘアセットで「ブロー」が最も重要なのか
では、なぜブローがそれほどまでに重要なのでしょうか。正しくブローを行うことで、以下のような、様々なメリットが得られます。
・髪型の基本的なシルエット(骨格)が決まる。
・生え際の頑固なクセや、つむじ周りの割れを、根元から矯正できる。
・トップ(頭頂部)に、自然で、ふんわりとしたボリュームを出すことができる。
・サイドや襟足をタイトに抑え、メリハリのあるスタイルを創れる。
・ワックスなどのスタイリング剤の馴染みが、劇的に良くなる。
ワックスは、ブローで作った土台の上に、質感や毛束感を加える、いわば「最後の仕上げ」です。土台がしっかりしていなければ、どんなに良いワックスを使っても、理想のスタイルを創ることは難しいのです。
初心者のための、簡単ブロー実践講座
難しそうに聞こえるかもしれませんが、いくつかの基本的なポイントを押さえるだけで、あなたのブロー技術は格段に向上します。
・ステップ1:まずは、しっかりタオルドライ
ドライヤーの時間を短縮し、髪へのダメージを減らすため、まずはタオルで、地肌を優しくマッサージするように、根元の水分をしっかりと拭き取ります。ゴシゴシと擦るのは禁物です。
・ステップ2:根元から、髪の流れに逆らって乾かす
まずは全体の根元を乾かします。この時、髪が生えている方向とは逆の方向に向かって、指で髪を立ち上げるようにしながら、ドライヤーの風を当てていくのがポイントです。これにより、髪がふんわりと立ち上がります。
・ステップ3:トップに、ボリュームを出す
頭頂部の髪は、指で根元から掴み、少し持ち上げながら、下からドライヤーの温風を当てます。数秒温めた後、ドライヤーを離し、掴んだままの状態で熱が冷めるのを待ちます。これで、トップに自然な高さが出ます。
・ステップ4:サイドと襟足を、タイトに抑える
逆に、膨らんでほしくないサイドや襟足は、上から下に、髪の流れに沿ってドライヤーの風を当てます。手のひらで軽く髪を抑えながら乾かすと、よりタイトに収まります。
・ステップ5:最後に、冷風でスタイルを固定する
全体の形が決まったら、最後にドライヤーを冷風に切り替え、髪全体に当てます。髪は、熱が冷める瞬間に形が固定されるため、この一手間で、スタイルのキープ力が格段にアップします。
プロの「ブロー」は、なぜ仕上がりが違うのか
基本的なブローでも、仕上がりは大きく変わります。しかし、プロの理容師が行うブローは、さらにその先を見据えています。
私たちプロは、お客様一人ひとりの髪質、生え癖、骨格、そして、その日に創り上げたヘアスタイルのデザインを、全て完璧に理解しています。その上で、どこにボリュームを出し、どこをタイトに抑え、どの毛流れを強調すれば、そのスタイルが最も美しく見えるかを、ミリ単位で計算しながら、ドライヤーの角度や風の強さ、ブラシの使い方を、瞬時に変えていきます。
それは、いわば、あなたのためだけに設計された、オーダーメイドのブローなのです。
最高のヘアカットと、その「取扱説明書」を。
私たちが考える最高のサービスとは、サロンを出る瞬間に、最高のヘアスタイルを提供することだけではありません。
その最高のスタイルを、明日から、あなた自身の手で、簡単に再現できるように、その**「取扱説明書」**を、丁寧にお伝えすることまでが、私たちの仕事です。
私たちは、あなたの髪を切るだけでなく、あなたの毎朝のヘアセットの「専属コーチ」でもあります。
もう、朝のスタイリングで悩む必要はありません。
最高のヘアカットと、一生使えるスタイリングの技術。
その両方を、ぜひ一度、手に入れに来てください。