「フリーランス美容師」に潜む罠。効率性と合理性を追求した先にあるものとは

美容院(理容院)の業界で『フリーランス美容師(理容師)』が増えているという話があります。
はじめに
美容師になったら、まずはどこかの美容院に就職するところから始まります。
そして美容師の仕事をある程度経験した後、いずれは自分のお店を持ちたい独立志向の方は多いようです。
しかし、いざ独立して開業しようとなると、結構なお金がかかります。
例えば、東京都内で新たに美容院を作ろうとする場合、3000万円程度はかかるという話を聞きました。
なかなかそれだけの資金を用意できる人は、そうそう居ないですよね。
なので『独立開業』と『勤め人』の中間あたりのところで『フリーランス美容師』が出てきています。
フリーランス美容師とは?
『フリーランス美容師』とは、どこかの美容室の(鏡の前の)一席を借りて、そこでお客さんの髪を切るという仕組みです。
売り上げのうちの3分の1や半分などを店側に納めて、自分は残りを得るという仕組みで『鏡貸し(面貸し)』と言われたりもしているようです。
結構この『鏡貸し』が流行っていて、そのための仲介業者も居るみたいです。
仲介業者とは?
仲介業者は、『フリーランス美容師』と『美容院』の間を取り持つ存在。
フリーランスの美容師に「〇〇店で鏡(席)が空いてますよ」と紹介して、中間マージン(報酬)を受け取るビジネスモデルです。
なので、美容室の店長に話を聞くと、仲介業者から「鏡空いてませんか?」と勧誘の電話が掛かってくるそうです。
トラブルが発生するケースも
しかし、フリーランス美容師の仕組みには、色々と問題があるらしくて、トラブルが起きているという話も聞きました。
トラブル①
お店の一部の鏡を貸しているとして、その部分(席)だけは、そのお店のお客さんではないですよね?そのお店ではなく、フリーランス美容師のお客さんです。
なので、そのお客さんが来店してきたとしても、その美容院にとっては「当店の客ではない」ということになるため、そのお客さんに対して愛想を良くしてくれないという事象が起こるケースがあるそうです。
もちろん担当するフリーランス美容師は、丁寧に接客するのかもしれませんが、お店全体として愛想良くしてくれることが無いのだそうです。
トラブル②
社員を雇用している場合は、社員が忙しくなってくると、手が空いている別の社員がサポートすることが出来ます。つまり、お客さん側からすると、お店全体で接客してくれているという安心感を得ることができます。フリーランス美容師だと、それが無くなってしまうという話を聞きました。
世界観が大事
美容院というのは一つの世界。
お客さんからすれば、良い感じの社員や、髪を切ってくれる自分担当の理容師さんを含めて、お店のみんなに歓迎されている感じを体験したいものなのです。
- 切り終わってさっぱりした
- 今日も気持ちが良かった
- この店に来てよかった
- 帰る時も頭がさっぱりして気持ちがいい
そのように、ずっと持続する気持ち良さがあってこその美容院なわけで、お店全体の空間みたいなものがフリーランス美容師だと作れないのだそうです。
つまり、お客さんの立場だと、フリーランス美容師が担当するお店では「自分は歓迎されていない客」のように思えてしまって、お互いにあまり気持ちの良い感じにならないということが起きてしまうみたいです。
合理性の闇
起業するとなると、お金がかかり過ぎて大変。しかし、雇用される(勤め人)よりも自由に働きたい。そう考えるとフリーランス美容師は、『起業』と『勤め人』の中間の存在として、新しくて面白い仕組みだという気はします。
しかし、そんな単純な話ではなく、そこには、
- 美容院という文化
- 接客とは何か
これらの追求が必要です。合理性だけ追求すれば解決する話ではないのです。
効率性や合理性は大事です。ただ、それだけではなく、
効率や合理性を追求し続けて、雑務を減らした後に残る人間らしさが、自分自身の本質であり、自分の仕事の本質でもあるのです。
美容師も同じで、起業するための手間やコストを省く、そうすると「フリーランス美容師は最高だよね」という話になりますが、様々な面倒なことを省いていった先に、どれだけ人間らしさが残るのかということをきちんと考えておかないと、うまくいかないんだなという感じがしました。
結論
常に『最後に残る人間らしさとは何か?』を私たちは考え続けなければなりません。
そこを忘れてしまうと、効率と効率と効率を掛け合わせたら、全く効率的じゃないものが出来上がってしまうみたいなことになりかねません。
テクノロジーが駆動して、物事が効率化されて合理的に変わっていく時代においても、自分にとって最後に残る人間らしさを常に意識し続けることが、やはりとても大事です。